「腸をきれいにしてくれるもの」と聞いて、まず思い浮かぶのは「食物繊維」ではないでしょうか。
しかし、実際には普段の食事からの摂取量が少なくなっているのが現状です。
1日の目標摂取量は男性20g、女性18g以上。
食物繊維たっぷりの食材を活用し、おなかの大掃除を始めましょう!
食物繊維は栄養にならない「第六の栄養素」?!

食物繊維は、炭水化物から糖質を除いたもので、「ヒトの消化酵素で分解されない食物中の総体」と定義されています。
栄養素ではないものの、「第六の栄養素」とも呼ばれ、腸内環境の改善や生活習慣の予防など、体にさまざまな効果が期待されています。
種類によって様々な生理作用がありますが、
最も重要な役割は、腸内細菌のエサになり、腸内環境を整えること。
善玉菌が食物繊維を発酵・分解することで「短鎖脂肪酸」が生成され、これが
悪玉菌の増殖を抑える働きをします。
また、消化されないため体内には吸収されませんが、腸はそれでも消化しようと活発に動きます。
この活動が副交感神経を刺激し、
免疫力の向上に繋がります。
ただし、過剰摂取には注意が必要です。食物繊維を摂りすぎると、腸の動きが過剰になり、逆に下痢を引き起こすこともあります。
「不溶性」と「水溶性」それぞれの働き
食物繊維には、不溶性と水溶性の2種類があります。
それぞれ役割が異なるので、どちらもまんべんなくとるようにしましょう。
●不溶性食物繊維(水に溶けない)
セルロース、リグニン、βグルカン、キチン・キトサンなど
- 水分を吸収し、便を柔らかくする。
- 体に吸収されず便となるため、便のかさが増え、腸壁を刺激して排便をスムーズにする。
- 有害物質を吸着し、排出を促進する。
●水溶性食物繊維(水に溶ける)
ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、フコイダンなど
- 脂質の消化吸収を抑える。
- コレステロールの吸収を抑えて排泄を促す。
- 血糖値の急上昇を防ぐ。
- ナトリウムの排出を促す。
毎日食べたい!食物繊維たっぷり食材
食物繊維の豊富な食材は、エネルギー摂取を抑えつつ、食事のボリュームを増やせるというメリットもあります。
主に植物性食品に多く含まれており、肉や魚介類、卵にはほとんど含まれません。
食物繊維が豊富な食材を、副菜などで積極的にとるようにしましょう。
●きのこ
(しいたけ、まいたけ、エリンギ、しめじ など)
食物繊維たっぷりの低カロリー食材。栄養成分や旨みを逃さないためには、水洗いせず、布巾で汚れをふきとる程度にしましょう。
- 不溶性食物繊維が多い…しいたけ、まいたけ、しめじ、きくらげ など
- 水溶性食物繊維が多い…なめこ、えのきたけ など
●海藻
(こんぶ、わかめ、ひじき、寒天 など)
きのこ類と並び、
低カロリーで食物繊維たっぷり。ミネラル類の種類も豊富です。
ねばりの元である水溶性食物繊維が腸内細菌を整えてくれます。
味噌汁やサラダに使うのはもちろん、おかずの一品としても便利です。
●未精白穀物
(玄米、大麦、全粒粉 など)
食物繊維を積極的にとるには、
主食はなるべく精白されていないものにするのがおすすめです。
例えば、
玄米には白米の約5〜6倍の食物繊維が含まれます。さらに、ビタミン・ミネラルなど、バランス良く栄養をとることができます。
●野菜、いも類
(ごぼう、さやいんげん、さつまいも、里芋 など)
野菜、いも類に含まれるビタミンやミネラルを無駄なくとるには、
加熱時間を短くして栄養素が壊れないようにしたり、スープごと食べて溶け出した栄養素もとるようにしましょう。
***
食物繊維たっぷりの食事は、食べるスピードもゆっくりに。腹持ちも良く、カロリーも控えめにできます。
今日からきのこや海藻をたっぷり取り入れて、あなたも“腸の大掃除”を始めてみませんか?
【参考文献】
『一生役立つ きちんとわかる栄養学』(西東社)
川端 輝江『いちばんわかりやすい栄養学の基本講座』(成美堂出版)
安保徹『今すぐできる! 免疫力を上げる31のルール』(学研プラス)
日本人の食事摂取基準2025(厚生労働省)
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