暑い時期になると、食品の安全が特に気になりますね。
食中毒警報が発令されて注意喚起が行われている自治体もあります。
食中毒は年間を通じて発生しているため、日頃から予防を心がけることが重要です。
食中毒の種類と原因、発生の多い時期
厚生労働省によると、令和5年の食中毒発生件数は1,021件(患者数:11,803人)とのこと。
主な原因は細菌・ウイルス・寄生虫の3つ。
発生件数が最も多いのが寄生虫のアニサキス、患者数がもっとも多いのがノロウイルスです。
【令和元年から令和5年の食中毒発生件数の割合】
細菌 |
カンピロバクターやウェルシュ菌など |
梅雨時期と夏に多い |
ウイルス |
ノロウイルスなど |
冬に多い |
寄生虫 |
魚介類に寄生するアニサキスなど |
一年を通じて発生 |
自然毒 |
きのこ、野草、ふぐなどに含まれる天然の毒 |
春や秋に多い |
化学物質 |
ヒスタミン、薬品(漂白剤)など |
― |
夏場は特に気をつけよう!食中毒予防のポイント
高温多湿となる梅雨の時期から残暑の頃にかけては、細菌の増殖が活発になるため、細菌による食中毒が発生しやすくなります。
賞味期限だけでなく、食品の取り扱いや保管方法にも気を配りましょう。
買い物- 食材が冷たいうちに帰りましょう。食品の温度が高くなると細菌が増えやすくなります。
- 冷蔵や冷凍の食品は、保冷剤などを利用して持ち帰るとよいでしょう。保冷剤などがない場合は、まとめて買い物袋の中央に詰めると温度が上がりにくくなります。
- 肉や魚などの水分がもれないようにビニール袋などにそれぞれ分けて包んで持ち帰りましょう。
- 帰宅後は、すみやかに冷蔵庫や冷凍庫に入れましょう。
- エコバッグを清潔に保ちましょう。肉や魚の汁、野菜の土などが付いたまま使い続けると、細菌が増えてしまいます。
冷蔵庫・冷凍庫- 冷蔵庫の詰めすぎに注意しましょう。目安は7割程度です。
- 冷凍庫はスキマなく詰めた方が、凍った食品同士が保冷材の役目を果たすため、冷凍庫を開けたときの温度上昇を防ぐことができます。ただし食材の詰め込みすぎなどで、冷凍庫の冷気の放出口を塞いでしまうと、冷気が行きわたらなくなる可能性がありますので注意してください。
- 肉や魚のなどの水分が、他の食材にかからないようにしましょう。特に、加熱せずに食べる食品には注意が必要です。
- 解凍する際は、「常温(自然解凍)で」と書かれたもの以外は、電子レンジや流水などを使って素早く行いましょう。
下準備・調理- 調理の前に手を洗いましょう。また、清潔なタオルやふきんを用意しましょう。
- 生の肉や魚などを扱った後は、手や調理器具をよく洗いましょう。
- 加熱して調理する食品は十分に加熱しましょう。
- 解凍して使う場合は、すぐに調理しましょう。冷凍や解凍を繰り返すのは危険です。
- 使い終わった料理器具やスポンジなどは、使った後すぐにしっかり洗いましょう。漂白剤を使ったり、熱湯をかけたりすれば消毒効果がアップします。
残った食材、調理済みの食品の取り扱い- 残った食品を扱う前にも手を洗いましょう。
- あら熱をとってから清潔な密封容器かラップで包み、早めに冷蔵庫や冷凍庫に入れましょう。
- 作り置きした料理は、なるべく早く食べきりましょう。また、食べる時はしっかり再加熱しましょう。
- 少しでもにおいや見た目がおかしいと思ったら、思い切って捨てましょう。
年間を通じて注意が必要なアニサキス
魚介類の中にはアニサキスという幼虫が寄生していることがあり、生食や加熱が不十分だと、生きたまま体内に入り食中毒の原因になる可能性があります。
一年で最も発生件数が多いのが、このアニサキスですので、十分に気をつけましょう。
そもそも「アニサキス」とは?見た目や特徴
形態:半透明な白色で細長い糸状
体長:約20〜35mm
幅:0.3〜0.6mm
生きられる温度:-20℃以上40℃以下
原因となりやすい食品:サバ、サンマ、アジ、イワシ、ヒラメ、サケ、カツオ、イカ等の海産魚介類の刺身、冷凍処理をしていないシメサバなどの加工品
症状:食後、数時間〜10数時間で、みぞおちの激しい腹痛、吐き気、嘔吐をおこします。食後、10数時間〜数日後に、激しい下腹部痛、腹膜炎症状を起こすこともあります。
- 予防のポイント -
- 鮮魚を一尾で購入した場合はよく冷やして持ち帰り、すぐに内臓を取り除きましょう。
※魚の内臓を生で食べることは避けてください。
- 冷凍や加熱でアニサキスは死滅します。
加熱:60度で1分以上(中心部まで十分に加熱する)
冷凍:マイナス20度で24時間以上(中心部まで完全に凍結させる)
- 迷信にご注意!酢や塩、しょうゆ、ワサビなどの調味料では、アニサキスは死滅しません。噛めば大丈夫ということもありません。
食中毒に負けない身体をつくろう!
細菌が付着した食べ物を食べても、食中毒になる人とならない人がいます。
原因となる菌を取り込んだ量の違いにもよりますが、これには免疫機能の違いが影響しています。
人は、悪影響を及ぼす菌などを撃退する免疫力を備えており、乳幼児やお年寄りなど免疫力が弱い人やお腹の調子が悪い人は、中毒を起こしやすくなります。
そのため、日頃から免疫力を強くすることも大事な予防法の一つです。
そして、
免疫の原点となっているのが「腸」です。
腸には、体内の免疫細胞の約6割が集中しているといわれています。
健康的な腸内ではビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が多くなり、乳酸や酢酸などを作って腸内を酸性にします。
これによって、悪玉菌の増殖を抑えて腸の運動を活発にすることで食中毒菌(細菌)の感染を予防できる腸内環境をつくります。
そのため、日々の食事から
食物繊維や発酵食品をしっかりとって腸内環境を整えておくことも大切です。
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食中毒は、予防方法をきちんと守れば防ぐことができます。
衛生管理と体調管理に気をつけて、美味しく安全に食を楽しみましょう!
【参考文献】
食中毒は年間を通して発生しています(農林水産省)
冷蔵庫のかしこい使い方〜知ってお得な食品の保存〜(農林水産省)
家庭でできる食中毒予防の6つのポイント(厚生労働省)
冷蔵庫と違う!冷凍庫はぎっしり詰めた方が効率的って知ってた?(冷食Online)
海の幸を安全に楽しむために〜アニサキス症の予防〜(農林水産省)
6月 食中毒を遠ざける秘訣(全国健康保険協会)
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