【監修】管理栄養士 加藤初美健康自然食料理教室エコロクッキングスクール指導講師
小腹が空いて何かを食べたくなったとき、皆さんなら何を食べますか?手軽に食べられそうなスナック菓子やドーナツ、クッキーなどで済ませていませんか?
また、「食べたいけれどカロリーが気になるのでちょっと…」と躊躇されている方、問題はカロリーだけではありません。実は、老化のスピードを加速させる食べ物でもあるのです。
-目次-
1. 糖化とはいわゆる「焦げ」
2. AGEs(終末糖化産物)とは?
3. 血糖が高いと「糖化」が進む
4. AGEsが多い食べ物
5. 糖化を防ぐ食事と対策
5-1 おすすめの食品・栄養素
5-2 控えたい食品
5-3 生活習慣のポイント
1. 糖化とはいわゆる「焦げ」
老化の原因の一つに「糖化」があります。糖化とは、血液中の糖とたんぱく質が結びついて、体内がいわゆる「焦げ」のような状態になることを言います。この糖化した物質(AGEs/エイジス)が体内に蓄積すると、老化を促進するといわれています。
たんぱく質は人間の体内のいたるところに存在するため、糖化は「皮膚・血管・骨・目・脳」など、すべての組織で起きる可能性があります。
2. AGEs(終末糖化産物)とは?
AGEsとは、終末糖化産物(Advanced Glycation End Products)の略で、「たんぱく質と糖が加熱されてできた物質」のことです。
わかりやすい例として、ホットケーキを考えてみましょう。小麦粉(糖)と卵や牛乳(たんぱく質)をミックスして加熱すると、表面がこんがりしたキツネ色になりますよね。糖とたんぱく質を加熱すると褐色(あるいは黄色い)になります。この色の変わった部分が「糖化」した部分、ここでAGEsが発生しています。
そしてこのような反応は、人間の体の中でも起きています。細胞や組織を作っているたんぱく質に糖が結びつき、体温で加熱されて「糖化」が起こり、AGEsができます。
AGEsは、お菓子のようにベタベタした砂糖まみれの物質を想像していただくとわかりやすいかと思います。
その結果、たんぱく質としての本来の働きがまったくできなくなるだけでなく、強い毒性を持ち、老化を進める原因物質とされています。
3. 血糖が高いと「糖化」が進む
体内のたんぱく質が糖化しても、初期段階では元の正常なたんぱく質に戻ることができます。しかし高濃度の糖に長期間さらされると、AGEsという毒性の強い最終物質に変わってしまい、元に戻れなくなります。そのため、AGEsの値は、どれだけ高い血糖に、どのくらい長い期間さらされたかという掛け算で表すことができます。
「AGEsの量=血糖値×持続時間」
掛け算の値が大きいほど、AGEsの量が増えて老化が早く進みます。
体内での糖化を防ぐためにも、血糖値を上げすぎない食べ方をしましょう。
4. AGEsが多い食べ物
AGEsは体の中でつくられるだけでなく、食べ物を食べることによって外からも取り込まれます。その食べ物に含まれるAGEsの約7%が、体内に溜まってしまうとも言われています。
AGEsは加熱してこんがり焼けたキツネ色の部分に発生しますので、「高温で調理した食品はAGEsが多い」と覚えておきましょう。
トンカツ、ステーキ、焼き鳥など、加熱した動物性食品には特にAGEsが多く含まれます。ポテトチップスやフライドポテトも避けたいものです。スナック菓子やドーナツ、クッキーといった糖とたんぱく質からできている食べ物にもAGEsは多く含まれていますので、食べ物を選ぶときの参考にしてください。
5. 糖化を防ぐ食事と対策
AGEsを体内で発生させないためには、血糖値を上げないことが大切です。血糖値を上げやすい食品のとり過ぎに注意し、代わりに血糖値を上げにくい食品に切り替えましょう。また、野菜・海藻など、糖質が少なく食物繊維の多い食品を先に食べると、血糖値の上昇を抑えます。さらに、ジュースやお菓子などに使用される人口甘味料は、ブドウ糖の10倍の速さでAGEsをつくるため、とり過ぎに注意しましょう。
5-1 おすすめの食品・栄養素
●主食は未精白穀物(玄米や分づき米、全粒粉で作ったパンや麺類、そば)にします。玄米から表皮と胚芽を取り除くと白米になりますが、表皮と胚芽に、美容と健康によいビタミン、ミネラル、食物繊維などがたっぷり含まれています。
●ビタミンB6などのビタミンB群は美容に役立つ栄養素です。ビタミンB群を含む食品をとりましょう。(玄米、分づき米、豆類、海藻類)
●善玉菌はビタミンB6を作ります。善玉菌を増やす食物繊維をとりましょう。(玄米、大豆、野菜、海藻)
●以下のビタミン・ミネラルが多い食品をとりましょう。
・ビタミンA(βーカロテン)(にんじん、かぼちゃ、ほうれん草)
・葉酸(玄米、大豆、大豆製品、野菜類)
・ビタミンC(キャベツ、大根、ブロッコリー、ピーマン、レモン、じゃがいも)
・ビタミンE(玄米、米ぬか油、大豆、大豆製品、ごま、アーモンド)
・亜鉛(玄米、納豆、魚介類、牡蠣、アーモンド)
・セレン(玄米、ごま、魚介類、海藻類)
●麹を使った発酵食品に含まれる、麹菌が作るコウジ酸をとりましょう。(味噌、甘酒)
●たんぱく質を、大豆・大豆製品・魚介類でとりましょう。
●イソフラボンを含む大豆、大豆製品をとりましょう。
●ファイトケミカルをとりましょう。ファイトケミカルは、植物が紫外線などから身を守るために自らつくり出した成分で、色つきの野菜などに多く含まれています。食事に様々な色(7〜8色)を揃えましょう。
・ポリフェノール(玄米、緑茶、春菊、ほうれん草、玉ねぎ)
・フィチン酸、フェルラ酸(玄米)
・イソフラボン、サポニン(大豆)
・リコピン(トマト、スイカ、柿)
・カテキン(緑茶、紅茶)
・アントシアニン(なす)
・フィコシアニン(藻類、のり、スピルリナ)
・アリシン、硫化アリル(にんにく、ねぎ、玉ねぎ、にら)
5-1 控えたい食品
●美容の大敵「糖化」した物質(AGEs:エイジス)を防ぎましょう。AGEsとは、糖質とたんぱく質が融合した物質です。AGEsが体内に蓄積すると、老化を促進するといわれています。
●AGEsは、糖質とたんぱく質を高温処理(炒める、揚げるなど)することで発生します。AGEsが多いといわれる焼肉、揚げ物、ドーナツ、クッキー、スナック菓子などは控えめにしましょう。
●体内でのAGEsの発生を防ぐため、糖の吸収の早い食品は控えめにしましょう。(精白食品<白米、白パン、白砂糖>、砂糖<お菓子、菓子パン、ジュース類>)
※ジュースや飲料を購入するときは表示を確認し、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖などが入っているものは控えめにしましょう。
●肉類や脂肪が多く、ビタミン・ミネラル食物繊維などの摂取が少ない欧米型食生活は控えめにしましょう。悪玉菌を増やします。悪玉菌が作る物質は、さまざまなトラブルを引き起こします。
5-3 生活習慣のポイント
●睡眠をしっかりとる
細胞の生まれ変わり(ターンオーバー)は夜10時〜夜中2時までの間に行われます。質のいい睡眠をしっかりとるため、夕食は練る3時間前までに済ませておきましょう。食べたものは消化されるまでに時間がかかります。
●食事はゆっくり、よく噛んで食べる
●食物繊維の多い食品を先に食べる
●腹八分目を心がける
●ストレスをためない
老化は生まれたときからはじまっており、年を重ねるたびに進んでいきます。そんな老化を予防(アンチエイジング)するためにも、「糖化」には気をつけましょう。
参考:Proc Natl Acad Sci U S A. 1997 Jun 10;94(12):6474-9.
J Am Diet Assoc. 2010 Jun;110(6):911-16.