動物は生育環境に応じて派の形状、消化器官の機能を変化させてきたため、それぞれ“適応食”が異なります。
コアラはユーカリ、パンダは笹、など。
では、人間の適応食は?
その動物が何を食べるのに適応しているかは、「歯の発達」「あごの動き」「胃腸や腸内細菌の役割」によって決まります。
歯のかたち・あごの動きから考える
草食動物は、植物(葉・穀類)の固い構造をすりつぶせるよう、臼歯が発達し、あごは上下・左右に動かせます。植物の少ない栄養を吸収するために、腸が長くなっています。
肉食動物は、肉を切り裂きやすいよう、鋭くとがった犬歯が発達し、臼歯はハサミのようなかみ形で、あごは上下方向に動きやすくなっています。肉類は胃で十分消化できるので腸は短めです。
ヒトは犬歯より臼歯が発達し、あごを横方向にも動かせます。腸も長めであること、また腸内細菌叢も炭水化物を分解する腸内細菌が多く、肉食動物に特徴的な腸内細菌が少ないことから「穀類・野菜を主に、動物性食品は少なめの食性」が適応食と言えます。
腸の長さを比べてみよう
腸が長いグループは草など植物を食べる草食動物短いグループは肉など他の生き物を食べる肉食動物です。
わたしたちヒトは肉も草(野菜)も食べます。肉食動物が草も食べられるように進化した肉食動物と草食動物のちょうど中間グループだといえます。
遺伝子の違いから考える
世界の様々な民族のアミラーゼ遺伝子の数を調べた結果、でんぷんをあまり食べない民族のアミラーゼ遺伝子は平均4〜5個これに対し、日本人などでんぷんを多く食べる民族のアミラーゼ遺伝子は平均7個であることが分かりました(図)
[1]。
さらに、日本人の約90%には海藻を消化する遺伝子を持つ腸内細菌がいるのに対し、外国人には非常に少ないことが分かりました。これは日本人が長年、海藻を食べ続けてきたためと思われます
[2]。
[1] 出典:食の起源(NHKスペシャル)日本人はご飯を食べても太りにくい!アミラーゼ遺伝子のメリットとは
[2] Nature. 2010 Apr 8;464(7290):908-12. doi: 10.1038/nature08937.
日本人の腸は炭水化物を求めている?
日本人106人の腸内細菌叢を解析し、アメリカ、フランス、ロシア、中国など他の11ヵ国の人々の平均的な腸内細菌データと比較しました(図)。
腸内細菌をその遺伝子群の機能で分類すると、日本人の腸には炭水化物を分解する菌がほかの国民より多いことが分かりました。小腸で吸収されない難消化性の炭水化物は、有用菌のエサになり、私たちの心身を守ってくれています
[3]。
[3] DNA Res. 2016 Apr.23(2):125-33
日本人の適応食とは?
私たち日本人にとって、米を中心とする穀物や野菜中心の日本の伝統食(和食)が、適応食といえます。
和食の基本は「一汁三菜」。主食のご飯からは炭水化物、主菜からはたんぱく質と脂質、副菜からはビタミンやミネラル、食物繊維がとれる、理想的なスタイルです。
また和食には、腸内環境を整える発酵食品が多い、蒸す・焼く・煮るなどの調理法で油分を抑えられるなどのメリットもあります。
*東北大学で行われた臨床研究の結果、1975年ごろの和食をとることは、健康維持に役立つことが示されています。
(参考) 日本栄養士会雑誌 60巻(2017)11号 p.625-632
適応食で本当に栄養はとれる?
スマートミール食事道膳
焼きししゃも/豆腐ハンバーグ・ポン酢ソース/胡麻豆腐/野菜の和え物/さつまいものレモン煮/ごはん/味噌汁
エネルギー546kcal たんぱく質19.7g 脂質13.3g 飽和脂肪酸2.25g 炭水化物86.6g 食塩相当2.3g
提供:自然食れすとらん元氣亭(東京都墨田区両国)
|
自然食れすとらん元氣亭で提供している『スマートミール食事道膳』の栄養成分を30〜40代女性の1食推奨量と比較しました。多くの栄養素が推奨量を上回っていることがわかります。
スマートミールとは、健康に関する要素を含む栄養バランスの取れた食事の総称です。
適応食の「米」を選んで洪水を防ぐ
日本人の米離れが進み、田んぼが減少しています。実は、田んぼが減ると水を貯めておく機能が低下し、洪水の原因になることがあります。
関東地方には約28.5万haの田んぼがありますが、この田んぼに貯留される水量は、東京ドーム450杯分以上にもなります
[1]。田んぼが減ると、一度にたくさんの水が下流に流れこむことに繋がります。
パンやパスタ、うどんなど小麦を使用した主食を選ぶ人が増えていますが、米は脳機能に良いこと、メタボを予防するなど、米が健康に役立つというデータも出ています
[2]。
地球環境を良くするため、健康のためにも、日本人か昔から食べているごはん(米)を選びませんか?
[1] 関東農政局HP「田んぼは小さな治水ダム」
[2] JAグループHP「NORICE NOLIFE なるほど!米の新発見」
健康にも環境にも嬉しい、米を中心とする穀物や野菜中心の「適応食」を選んで、日本人が大切に育んできた食文化を見直してみませんか?
【関連記事】
食事道のキホン「食の三原則」で健康的な体づくり
身体と土は一体!旬をいただく「身土不二」の考え方
まるごと食べて栄養アップ!エコにも繋がる「一物全体食」の考え方