私たちが摂取した食物は、そのままの状態で血や肉になるわけではありません。
胃や腸で小さく分解(消化)され、体内に吸収されて、はじめて健康の役に立つのです。
仮に100万円かけて栄養豊富な食品を食べても、まったく「消化・吸収」されなかったら体内で利用できません。
100万円分の便になって排出されてしまいます。
今回は、栄養素の消化・吸収の仕組みについてご紹介します。
消化のしくみ(口〜肛門まで)
口→食道→胃→小腸(十二指腸・空腸・回腸)→大腸→肛門まで続く、一本の管のことを「消化管」と言います。口から入った食物は、消化管を通りながら、体に必要な栄養分が消化・吸収され、余りは最後に便として排出されます。
○ 口
歯で食べ物を小さくし、それを舌がだ液と混ぜ合わせて、食道に送ります。だ液は糖質(デンプン)の消化酵素を含みます。
○ 食道
食道壁の蠕動(ぜんどう)運動によって、食べ物を胃へ送り込みます。
○ 胃
食べ物を胃液と混ぜ合わせます。胃液にはたんぱく質の消化酵素が含まれます。
○ 十二指腸
胃の出口から約25cm。すい液と胆汁が出てきて、栄養素の本格的な消化がはじまります。
○ 小腸
小腸の表面にある微微絨(びじゅうもう)という部分で、栄養素を最小単位に分解します。ほとんどの栄養素は、小腸から吸収されて全身に運ばれます。
○ 大腸
小腸で吸収されなかった水分を吸収し、体に不要となった老廃物を材料に便をつくり、体外に出す役割を担っています。
3大栄養素(脂質・炭水化物・たんぱく質)の 消化・吸収
ご飯など「炭水化物」の消化・吸収
だ液に含まれる消化酵素アミラーゼから消化がはじまります。胃に送られ胃液が出るまでは、だ液のアミラーゼが働いており、 デンプンの約50%が分解されます。
「ご飯や芋を食べると胃がもたれる・・・」という方は、よく噛んで、唾液のアミラーゼを出しましょう。
また、炭水化物の消化酵素を多く含む、大根おろし、山芋、麹を使った発酵食品などを取り入れましょう。
なお炭水化物が分解されると「糖質」になります。糖質は、生命維持のためのエネルギー源として全身で使われます。玄米や大豆に多いビタミンB1を一緒にとると、代謝がスムーズになります。
大豆や動物性食品など「たんぱく質」の消化・吸収
胃液に含まれるペプシンという消化酵素により、消化がはじまります。その後、小腸内でアミノ酸という最小単位になり吸収されます。
たんぱく質は、体をつくるのに欠かせない栄養素です。筋肉や臓器、皮膚、爪、髪、血液など、体のあらるゆ部分を構成する主成分。体内で行なわれる化学反応に必要な酵素や免疫抗体、神経伝達物質、 ホルモンの材料にもなります。
焼き魚に添えられる大根おろしにはタンパク分解酵素が多いので、たんぱく質を活かすのに、とても効果的な食べあわせですね。
油や脂肪など「脂質」の消化・吸収
小腸の上部、十二指腸から消化がはじまります。胆汁の助けで消化されやすい形になり、すい液の消化酵素リパーゼで 分解されはじめます。
「油っこい食事をするとおなかの調子が悪くなる・・・」という方は、胆汁やリパーゼによる分解が追いついていないのかもしれません。
脂質は、エネルギーの貯蔵係。細胞膜やホルモンの生成、体温の維持、肌の保湿などにも関わる大事な栄養素です。ただし、とりすぎには注意しましょう。
上記の3大栄養素のほかにも、ビタミン・ミネラルなど、さまざなま栄養の働きが連携することで、健康は保たれています。栄養をバランスのよく摂取すること、そしてしっかりと消化吸収することが 健康になるために欠かせないことがわかりますね。
どんなものを食べるかも大事ですが、 しっかりと栄養素を消化・吸収することができてはじめて、健康を保つことができます。
なお、この大切な「消化」を助ける消化酵素は、ストレスや加齢などにより減ることもあります。
「健康的な食品を食べているのに元気が出ない・・・」という方は、食事から消化酵素を補ってみてはいかがでしょうか。消化酵素は、生の大根やかぶ、味噌や麹などの発酵食品に多く含まれています。
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【参考】
書籍『新しい栄養学と食のきほん辞典』
書籍『栄養の基本がわかる図解辞典』