Vol.1092015年3月20日配信
穀類、野菜などの植物性食品に豊富な食物繊維。昔からお通じを快調にする"健康成分"として知られています。 食物繊維とは、人の消化酵素で分解できない難消化性成分のこと。きのこなどに豊富なβグルカン、野菜に含まれるセルロースなど多くの種類があり、水に溶けない不溶性食物繊維と、水に溶ける水溶性食物繊維に大きく分けられます。どちらの食物繊維もブドウ糖などがつながった多糖類ですが、でんぷんや砂糖と異なり、人の消化酵素で分解されずに大腸に届いて、さまざなま作用を発揮します。 |
【不溶性食物繊維】 主な作用は、大腸で水を吸って膨らみ、便のかさを増すとともに便の腸内運搬速度を速め、お通じをスムーズにすることです。また、腸内細菌に良好なすみかを提供している側面もあります。野菜や未精白の穀物に多く含まれます。 【水溶性食物繊維】 ビフィズス菌など“善玉菌”のエサになります。水溶性食物繊維を分解した腸内細菌は、酪酸、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸を産生します。その結果、腸内のpHが低下し、腸内環境が良好に保たれ、ミネラルの吸収もよくなります。ワカメなどの海藻類、果物などに含まれます。 その他【難消化性でんぷん】 でんぷんのうち、消化吸収されずに大腸に到達し、食物繊維とほぼ同じ働きを持つ成分。レジスタントスターチともいいます。でんぷんは本来、消化酵素で分解されますが、ご飯を冷やす、じゃがいもをポテトサラダにするなど“冷やす”ことで、消化酵素を寄せつけない難消化性でんぷんが増えます。腸での働きは水溶性食物繊維に近いのですが、便のかさ増し作用もあります。 |
食物繊維が多い良質な食事はダイエット効果があるとよく言われますが、そのメカニズムは以下のように考えられています。 |
1 |
食物繊維が多い食事は、よく噛んで食べる必要があり満腹感が得やすい。また水分と一緒にとるとお腹の中で膨らむため、食事の量を減らせる。 |
2 |
腸内細菌を介して短鎖脂肪酸が産生されることで、肝臓の糖放出が抑えられ、その結果インスリンの効きが良くなり分泌量が抑えられる。 |
3 |
糖や脂肪の吸収が穏やかになり、食後血糖値の上昇が抑制され、インスリンの分泌量が抑えられる。 |
日本食事摂取基準では、これまで成人女性の食物繊維摂取目標量を1日17gとしていましたが、2015年4月施行の新たな基準は18g以上に増えます(成人男性の食物繊維摂取目標量は19g以上)。 平成20年国民健康・栄養調査結果から見てみると、食物繊維摂取量は10〜40代でかなり少ないことが分かります。最近の日本の食生活では、15g程度は通常の食事から摂取できていますが、あと5g食物繊維を摂取したいところです。 |
最も簡単に摂取量を増やせるのは、和食中心の食生活にすることです。味噌汁の具や副菜からも食物繊維がとれます。また、主食の米を玄米や雑穀にするものおすすめです。 |
食物繊維を毎日の生活にプラスして、スッキリ生活を送りましょう。 |
* * * |
【参考】日経ヘルス2015年3月号 |